日本学術会議ニュース

【SCJ】「日本学術会議の在り方に関する政策討議取りまとめ」について(会長メッセージ)

        令和4年2月1日
総合科学技術・イノベーション会議「日本学術会議の在り方に関する政策討議取りまとめ」
(令和4年1月21日)について(会長メッセージ)
         日本学術会議会長
         梶田隆章

この度、総合科学技術・イノベーション会議の有識者議員7名(以下「有識者議員」)により、「日本学術会議の在り方に関する政策討議取りまとめ」(以下「取りまとめ」)が公表されましたので、取りまとめの内容や今後の対応についての考え方を会員・連携会員並びに学協会の皆様にお伝えします。
以下をお伝えする前提として、日本学術会議会長はその職責上、総合科学技術・イノベーション会議の構成員ですが、本件議論においては日本学術会議の現状に関する資料や見解の説明者として参加したにとどまり、取りまとめの作成には関与していないことを申し添えます。取りまとめにおける日本学術会議の発言の取捨選択や配列は有識者議員の判断と責任の下で行われています。(なお、政策討議の議事概要は総合科学技術・イノベーション会議HPをご覧ください。)
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/yusikisha/index2021.html

取りまとめでは、令和3年4月に公表した「日本学術会議のより良い役割発揮に向けて」(以下「より良い役割発揮報告」)で我々が示した見解と認識を同じくする部分と、異なる認識が表明されている部分とがあります。それらについて、日本学術会議を代表すべき立場にある私の見解を、あらかじめ幹事会構成員にも意見を求めた上で、以下のとおり会員及び連携会員並びに学協会の皆様にお伝えします。

まず、昨年5月以来、政策討議の場において、日本学術会議の在り方に関して有識者議員が多くの時間を費やして熱心な議論を行い、取りまとめを作成されたことに敬意を表します。
日本学術会議の在り方に関する我々の見解は、より良い役割発揮報告に示したとおりです。我々がそこに示した、国際活動の強化、意思の表出と科学的助言機能の強化、対話を通じた情報発信力の強化、透明性のある会員選考プロセス、事務局機能の強化という改革の方向性に関し、取りまとめの認識も基本的に一致しています。
また、総合科学技術・イノベーション会議と日本学術会議が「車の両輪」であることが確認されており、今後、その内容について、改めて幅広い観点から協議していくことが必要と考えています。
加えて、取りまとめにおいて、改革を実施していくうえで「所要の事務局機能、財政基盤等の再構築は不可欠」と述べられているとおり、会員が全員非常勤であること(これは日本学術会議に固有の形態ではなく、各国アカデミー共通の事象です)を十分考慮し、事務局機能・スタッフ機能の充実と財政基盤の拡充が必要とする点で、有識者議員が我々と見解を同じくしたことを歓迎します。

他方、取りまとめの「5 結論」において、「改革のフレームや時間軸についての考え方や具体的な進め方などについては、必ずしも一致を見ていないことが認識された」と記述されています。
欧米の多くのアカデミーと異なり、日本学術会議においては、会員は終身制ではなく任期制になっていることから、執行部が責任を持って取り組むことができる期間が限定されています。より良い役割発揮報告は、今期の執行部の任期が令和5年9月までであることを前提に、現行の法律も踏まえ、かつ、同時に長期的な視野にも立って、任期内に実行可能な方策を検討して取りまとめたものです。
これに対し、有識者議員は、我々が踏まえていたそのような前提ないし制約条件をいったん外し、ある意味、理想的なアカデミーの在り方を議論することを志向したと考えられます。このような議論の意義や進め方自体を否定するものではありませんが、より良い役割発揮報告と今回の政策討議の「フレームや時間軸」にずれが生じたことの一因はここにありました。
政策討議の場で日本学術会議側から繰り返し説明したように、各国のアカデミーはそれぞれの国の歴史的経緯を伴った学術に関する「生態系」の構成要素であり、その在り方の特性もそれによって規定されています。したがって、「生態系」全体を視野に入れて考察することなく、その構成要素の一つであるアカデミーだけを取り出して海外のそれと比較してみても、生産的な結論は生まれません。取りまとめが求める理想的なアカデミーの在り方とその実現に向けた方策の検討のためには、日本の学術全体を見据えた長期的かつ総合的な議論の場が必要であると考えます。残念ながら今回の政策討議はそれを行える場ではありませんでしたが、そのような議論の場が設定されるのであれば、我々はそこに参加する用意があることを付言します。
組織形態に関しては、同じく取りまとめ「5 結論」において、「現在の組織形態が最適なものであるという確証は得られていない」と述べられています。しかし、今回の政策討議では、日本学術会議の組織形態が議論された過去の会議(平成15年総合科学技術会議、平成27年日本学術会議の新たな展望を考える有識者会議)での検討をレビューすることを中心に議論が進められ、公表されている会議資料や議事概要を見る限り、具体的な組織形態について十分に掘り下げた議論は行われなかった模様です。
他方、より良い役割発揮報告は、日本学術会議を国の機関とする場合、国の機関以外の設置形態とする場合の双方について、前者に関しては、現行形態に加えて立法・行政・司法のいずれからも独立した国の機関としてのあり方の検討可能性にも言及し、後者に関しては独立行政法人、公益法人、特殊法人という3つの類型を具体的に念頭に、各種形態のメリット・デメリットについて専門家を交えた詳細な検討を行った上で取りまとめたものであり、政府における今後の検討においても議論のベースとなり得るものと確信しています。

政府における今後の検討は、小林内閣府特命担当大臣(科学技術政策)の下で行われることとなる見込みです。
取りまとめの公表の同日夕方に行われた小林大臣との面談では、大臣から、あらかじめ決め打ちすることなく丁寧に検討を進め、できれば夏までには政府としての方針を示したいこと、日本学術会議とコミュニケーションをとりながら、引き続き未来志向で取り組んでいきたいことなどのお話がありました。
今後の対応においては、政府との信頼関係の構築の妨げになっている任命問題の一日も早い解決を図った上で、より良い役割発揮報告に示した日本学術会議の考え方が反映されるよう、政府に求めてまいります。もちろん日本学術会議としても、より良い役割発揮報告で示した改革を着実に実行してまいります。会員・連携会員並びに学協会の皆様におかれましては、引き続きのご理解とご支援をよろしくお願いします。